原爆を通じて学んだ “One to One”


松原さんの第一印象は、普通の中高年齢者とあまり変わらないのではないか、というものでした。しかし近寄ってみると、濃い目の化粧と鋭い視線からとても強い意欲を察する事が出来ました。

人間は顔に何百もの筋肉をもち得ているといいますが、45分間のお話の間に見せて下さった松原さんの表情は今までに見た事のない物でした。後からになって、松原さんを含む被爆者の多くが幾度もの手術を重ね火傷の後を消している事を学びましたが、彼女のとてつもなく険しい表情がその結果だったかどうか、私が知る事は無いでしょう。

私は彼女の発する英語よりも、英語を学ぶ決意に感動しました。痛ましくも鮮明な彼女の絵には彼女の、原爆の悲惨さを伝えてゆこう、という決意が表れていました。私が思うには、そんな彼女の絵は芸術の原点にあたります。言葉で表現しきれないような経験や感情を表し、他人に分かって貰う為の道具でもあります。

被爆者の話を直に聞けることが出来た私達はとても幸運でした。六十三年前の経験を語って下さった松原さんには心から感謝しています。しかし、松原さんご自身も戦後、日本人でさえにも被爆者として差別を受けていた時に優しくしていただいたあるアメリカ人の女性に助けられていらっしゃったようでした。そのような行為を通じ、松原さんも徐々にアメリカ人を許し、代わりにもう二度とこのような悲劇がおこらないよう、ご自身の経験を伝えて行こうという決意を持つようになったそうです。

後になって初めて気づきましたが、この原爆の教訓は私達World Campus Internationalのありがとうイベントで歌う”One to One”という曲そのもののようです。一人のアメリカ人が松原さんに良くして下さったからこそ、私達がその善意を受ける事ができたのです。更にさかのぼれば、そのアメリカ人が松原さんに親切にするきっかけとなってくれた人にも感謝したくなります。このように、実に一人一人で始まり、どんな人にでも、誰かを変える事が可能なのではないでしょうか。

(東京都大田区出身、吉田有紀)

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